伊万里トンテントン祭り:「合戦」巡り足踏み 7年前の死亡事故、遺族が反対/実行委「奉納合戦」で安全性確認 /佐賀
毎日新聞 2013年09月14日 地方版
伊万里市のけんか祭り「伊万里トンテントン祭り」の実行委員会が祭りの開催日(10月25〜27日)を前に足踏みしている。呼び物の「合戦」の形式を今年度から変える一方、7年前の合戦の死亡者の遺族に「安全性の説明をしたい」と申し入れたが、面会を拒否されているからだ。双方の見解の相違は大きく、相互理解への道は遠い。【渡部正隆】
トンテントンは荒御輿(あらみこし、600キロ)と団車(だんじり、550キロ)が組み合って相手を押し倒す合戦が呼び物で「日本三大けんか祭り」の一つ。例年負傷者が多く、2006年には男子高校生が団車の下敷きになって死亡した。
高校生の父親(58)は「危険な合戦形式の祭りの廃止」と損害賠償を伊万里トンテントン祭奉賛会(当時の主催者)に請求。奉賛会が示談書で廃止を約束したので、父親も賠償請求をやめた。奉賛会はその後、解散。08年度から伊萬里神社御神幸祭実行委員会=櫻井徳幸委員長(55)=が祭りを主催している。
実行委は11年度から荒御輿と団車を静かに組み合わせてゆっくり離す「模擬合戦」として合戦を復活させた。押し倒すことがないので安全な半面、盛り上がりに欠けるとの声も出た。このため、実行委はより本来の合戦に近い形式を模索。両者を組み合わせた後、団車側にのみ倒す「奉納合戦」を考案し、2回の安全確認実験を経て6月末、今年度の合戦の形式として決めた。
実行委は模擬合戦の昨年度から「遺族側と話し合いたい」と父親に接触しかけたが、周囲の「七回忌までは静かに」との要望を受け入れた。今年度は父親の知人の氏子総代を仲介者に立て「安全性の説明がしたい」と説得を続けたが、父親は面会を拒否した。
櫻井委員長は「奉納合戦は事前に倒れる方向が決まっているので参加者は余裕を持って対応できる」と安全性を強調。更に「我々は模擬合戦の段階から合戦の参加者に安全講習会の受講を義務づけるなど安全対策に努めてきた。合戦は伊万里の町おこしのためにやること。その思いも含めて父親に伝えたい」と付け加えた。